南仏生活のいろいろ


by atelier-cypres
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Un conte de Noel~ノエル物語

映画鑑賞後記

【 Un conte de Noël 】 

監督・脚本:Arnaud DESPLECHIN
出演:Catherine DENEUVE、
Jean-Paul ROUSSILLON、Mathieu AMALRIC,
Anne CONSIGNY、Melvil POUPAUD、Emmanuelle DEVOS、Chiara MASTROIANNI

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今年のカンヌ映画祭のコンペ出品作品。出演のカトリーヌ・ドゥヌーヴは第61回カンヌ映画祭特別賞を受賞した。フランスのリアリズム映画である。

カメラワークに特徴があり、映像の質感には優良な部分と粗い部分がない交ぜになっているところ、時に壁穴から覗いたように狭い視点で見つめるアングル、短いショットの移り変わり・・・こんな風にムラがあり、狭くなったり広くなったりするのが人特有の視点ではないかとさえ思う。背景に現れる家の情景や街並みにあえてフォトジェニックでないものも取り入れることで現実感をかもし出している。デスプレシャン監督の手になるとフランス北地方の普通の街灯、陳腐なノエルの飾り、水たまりに映るネオンまでもが宝石の煌きのように一瞬見えたり、美しいはずの雪景色が無意味な全く輝きのない平坦なものと見えたりする。
この映画に登場する人物、中心的な役割をしているヴュイヤール家の次男アンリを演じるのは「潜水服は蝶の夢を見る」の中で脳卒中により全身麻痺に陥った男性を演じた最近注目のマチュー・アマルリックである。彼はとてもこの役柄にピッタリであり、見る見るうちに彼の魅力を理解する。

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この映画に主役はおらず、全ての登場人物(つまり両親とその3人の子供と義娘、その子供達、親戚、息子の彼女など)それぞれの視点とエゴの中心を描きつつ、一つの流れの中でその時間と空間を全体で共有する、というまさに現実そのものが描かれている点が最も魅力的であり、驚きでもある。

次男(アンリ)を「子供の中で一番嫌いな子」と公言して憚らないカトリーヌ・ドゥヌーヴ演じる母親(その演技も実に味があった)、メランコリック(鬱)症でアンリとの絶交宣言をした長女のエリザベート、頼りなさそうでも2男児の父親となっている三男イヴァンの妻役のキアラ・マストロヤンニは思春期以来の夫の従兄弟との相思相愛を果たそうとする・・。一見家族間の愛憎劇のようでそうはならず、ここでは誰の立場に対しても善悪の評価をつけることが無意味であることに気がつかされる 。何故なら別の者の視点に立つと事情が違ってくるからである。そういったズレが日常にはゴロゴロ転がっている。また、一貫して家族と妻への無言の愛を貫く父親の存在が家族を繋げており、全てを受け入れる哲学が読み取れる。

エリザベート役のアンヌ・コンシニーは「多分家族だから“嫌いだ!”と言い合ったりできる、ということなのだと思う。」と語っている。嫌い嫌いも好きのうち、と言うが「嫌いと言えるほど好き」なのだと言う。

母親が一番嫌いと公認のアンリが白血病を発症した母親の脊髄提供者となるのだが、家族の営みの中では病気のことは二の次・・という風、病気でさえ家族を集める口実となる。

デスプレシャン監督は前作(Roi et reine)で採用したのとほぼ同じキャストを今回も起用している(Catherine DENEUVE、Jean-Paul ROUSSILLON、Mathieu AMALRIC、Emmanuelle DEVOSなど)。撮影時には監督はカメラの後ろからメガフォンを取るのではなく、演技中もカメラに入らない地面すれすれのところまで来て俳優の演技に一緒になって演出援助をしたということ。誰より早く現場に現れ一番最後に帰るほどの情熱の傾けようで、撮影中は止まることなく動きまわり、時には飛び上がり、時には地面に這いつくばって演技指導をした。

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by atelier-cypres | 2008-06-04 06:52 | 日常より